2026/06/09 15:44
弦曲堂店主の河崎 和広です。
中古レコードを掘っていると、時々不思議な盤に出会います。
Countryなのにロックっぽい。
フォークなのに泥臭い。
West Coastなのにどこか南部の匂いがする。
そうした曖昧で、境界線の滲んだ音楽達は、後に “Country Rock” や “Americana” と呼ばれるよう派手なヒット作だけではなく、小さなレーベルに残された無名盤、短命グループの自主制作、英国人が憧れで鳴らしたアメリカ音楽…。
その一枚一枚の積み重ねが、現在のAmericanaへと繋がっています。
今回、年表にしてみました。
Tracing the Footprints of Country Rock
〜フォーク、ブルーグラス、ロックが交差した “Americana” の源流〜
1950s
Country & Folk の時代
Country Rock誕生以前、アメリカではカントリー音楽
- Hank Williams
- Johnny Cash
- The Louvin Brothers
そしてフォーク音楽が広く親しまれていた。
- Woody Guthrie
- Pete Seeger
同時期、Bill Monroeを中心にブルーグラスが発展。
後のCountry Rockに欠かせない
- マンドリン
- フィドル
- ハーモニー
- アコースティック感覚
の基礎がこの時代に形成される。
1960–1964
Folk Revival と West Coast Folk Scene
アメリカ西海岸ではフォークブームが拡大。
特にロサンゼルス〜グリニッジ・ヴィレッジ周辺では、
- Bob Dylan
- The Kingston Trio
- The New Christy Minstrels
などが人気を集める。
この頃から若いミュージシャン達が「ロックにカントリーやフォークを混ぜられないか?」と考え始める。
1965
Bob Dylan Electric化
Bob Dylanがエレクトリック化。フォークとロックの壁が崩壊し始める。
この衝撃は後のCountry Rock誕生に決定的な影響を与えた。
同時期、
- The Beatles
- The Beau Brummels
などもアメリカン・ルーツ音楽へ接近。
1966
The Byrds が扉を開く
The Byrds『Fifth Dimension』でフォークロック路線を深化。
Roger McGuinnの12弦ギターとカントリー感覚が融合し始める。
同時期、西海岸では
- Buffalo Springfield
- Poco前夜のグループ群
が活動を開始。
1968
Country Rock 元年
The Byrds『Sweetheart Of The Rodeo』発表。Gram Parsons加入により、
- Pedal Steel
- Honky Tonk
- Traditional Country
を本格導入。ここから “Country Rock” という概念が明確化する。同年、
- Dillard & Clark
- The International Submarine Band
など重要作品が続出。
1969
Flying Burrito Brothers 登場
Gram ParsonsとChris Hillmanが
The Flying Burrito Brothers結成。
『The Gilded Palace Of Sin』発表。
サイケデリック後のアメリカに、
- Country
- Gospel
- Soul
- Cosmic American Music
を持ち込んだ歴史的作品。
“Americanaの原点” と呼ばれることも多い。
同時期、
- Nitty Gritty Dirt Band
- Poco
- New Riders Of The Purple Sage
- Great Speckled Bird
· なども台頭。
1970–1972
Country Rock 黄金期
Country Rockが西海岸シーンで巨大化。
特に
- Eagles
- Poco
- Pure Prairie League
- Michael Nesmith
- Linda Ronstadt
らが人気を拡大。
Pedal Steel Guitarを使った柔らかいサウンドがFMラジオで支持される。
この頃には
「カントリーを都会的に洗練する」
という方向性が確立。
1972
Will The Circle Be Unbroken
Nitty Gritty Dirt Bandが
『Will The Circle Be Unbroken』発表。
Roy AcuffやDoc Watsonら伝統派と共演し、
- Country
- Bluegrass
- Folk
- Rock
を世代横断で結び付けた歴史的大作。後のAmericanaシーンへ極めて大きな影響を与える。
1973–1975
Mainstream化
Eagles『Desperado』『On The Border』などが大ヒット。Country Rockはアメリカのメインストリームへ。
一方で、
- Gene Clark
- Dan Fogelberg
- Emmylou Harris
らによって、より内省的でシンガーソングライター色の強い流れも発展。
Late 1970s
Outlaw Country と Americanaの萌芽
Country RockはAOR化・商業化が進む一方、
- Willie Nelson
- Waylon Jennings
らのOutlaw Country勢が人気を集める。
同時に、
- Guy Clark
- Townes Van Zandt
など “ルーツ志向” のソングライターが再評価される。
後のAmericanaに繋がる感覚が形成されていく。
1980s
Roots Revival
MTV時代に入る中、ルーツ回帰運動が始まる。
- Steve Earle
- Long Ryders
- Jason & The Scorchers
などがCountry Rockを再解釈。
“Cowpunk” と呼ばれる動きも登場。
1990s
Americana 誕生
“Americana” という言葉が定着。
- Uncle Tupelo
- Son Volt
- Wilco
らAlt-Country勢が登場。
Country Rockは
「懐古音楽」ではなく、
「アメリカ音楽の源流」
として再評価され始める。
2000s–現在
Americana 全盛時代
現在では
- Gillian Welch
- Ryan Adams
- Jason Isbell
- Sturgill Simpson
- Chris Stapleton
などが活躍。Country RockはFolk / Bluegrass / Indie Rock / Southern Soulと結び付きながら進化を続けている。
“Americana” は今や一つの巨大ジャンルとして世界的に定着している。
キーワード用語
* Cosmic American Music
Gram Parsonsが提唱した “ジャンルを超えたアメリカ音楽”。
* Pub Rock
英国版Roots Rock。Punk前夜の重要シーン。
* Alt-Country
1990年代以降のオルタナCountry。
* Americana
Country、Folk、Blues、Bluegrassを包括する現代ルーツ音楽概念。
Country Rockというジャンルには“完成され過ぎていない美しさ” があります。
都会的になり切れず、かといって伝統だけにも戻らない。
その揺らぎの中で生まれた音楽達には、現在の整い過ぎたサウンドにはない、人間臭さと温度があります。
弦曲堂では、有名盤だけでなく、
「まだ埋もれているCountry Rock」や「Americanaへ繋がる小さな足跡」
を少しずつ紹介していきたいと思います。
