2026/06/26 21:32
近年、「新譜レコードは昔のレコードより音が悪い」という声を見かけることがあります。ただし、すべての新譜が音質的に劣るわけではありません。むしろ、原因は製造工程やマスタリングにあることが多いです。
主な理由は次のとおりです。
1. デジタル音源からカッティングされることが多い
現在の新譜の多くは、録音・ミックス・マスタリングまでデジタル環境で制作されています。
そのため、
- CD用
- 配信用(Spotify・Apple Musicなど)
と同じマスターをそのままレコード化している作品も少なくありません。
本来レコードには、
- 高域の調整
- 低域のモノラル化
- 適切な音量設定
など専用のマスタリングが望ましいのですが、それが十分に行われていないと音が硬く感じたり、歪みやすくなったりします。
2. ラウドネス戦争(Loudness War)の影響
1990年代以降は音を大きく聴かせるため、
- ダイナミックレンジを圧縮
- コンプレッサーを強くかける
作品が増えました。
そのマスターをそのままレコード化すると
- 音が平板
- 奥行きがない
- レコードらしい自然さが失われる
という印象になります。
3. プレス工場の品質差
近年のレコードブームで世界中のプレス工場が非常に忙しくなっています。
その結果、
- センターホールのズレ
- ノイズ
- 反り
- 非充填(Non-fill)
- 表面ノイズ
など品質のばらつきが増えたという指摘があります。
一方で、高品質な工場でプレスされた盤は非常に静かで優秀です。
4. 原盤(マスター)の問題
昔の名盤の再発では、
理想
オリジナル・アナログ・マスターテープ
現実
CDマスター
高圧縮デジタルファイル
コピー音源
から制作されることもあります。
当然、音質は元の素材に左右されます。
5. 長時間収録
コスト削減のため、
片面25〜30分近く
収録する盤があります。
レコードは物理的に
- 溝が狭くなる
- 音量を下げざるを得ない
- 低域を削る
必要があり、
結果として迫力が失われます。
昔のロックLPが片面18〜20分程度だったのには理由があります。
6. カッティング技術者の違い
レコードは最後にラッカー盤へ音を刻む「カッティング」が非常に重要です。
名エンジニアが担当すると
- 音場
- 空気感
- ダイナミクス
が大きく向上します。
逆に短納期で量産されると品質差が出やすくなります。
一方で、新譜でも非常に音が良いレーベルはある
例えば、
- Analogue Productions
- Mobile Fidelity Sound Lab
- Intervention Records
- Speakers Corner Records
- Craft Recordings(一部作品)
などは、
- オリジナルテープ使用
- レコード専用マスタリング
- 高品質プレス
にこだわることで高い評価を得ています。
まとめ「レコード選びで本当に大切な事」
「新譜レコードだから音が悪い、昔のレコードだから音が良い――という単純な話ではありません。音質を左右するのは、どのようなマスターが使われ、どのようにカッティングされ、どのような品質でプレスされたかという制作工程です。だからこそ、中古レコードを選ぶ楽しさだけでなく、新譜でも制作背景を知って選ぶ楽しさがあります。」
